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温度差の少ない室内環境で高齢者の身体活動量が多いことを確認
—フロアー暖房群と部分暖房群の室内温度と活動量調査で—

2013年8月27日
株式会社住環境研究所

 積水化学工業株式会社住宅カンパニー(プレジデント:髙下貞二)の調査研究機関である株式会社住環境研究所(所長:倉片恒治)は、このほど長寿科学や老年学・老年医学に関する総合的・中核的な国立研究機関である独立行政法人国立長寿医療研究センター(研究所長:鈴木隆雄)と共同で、「高齢者の住まいにおける室内温度と活動量調査」を実施しました。調査は非居室を含むフロアー各居室間の温度差が少ないグループをフロアー暖房群(N=18)、リビングなど主要な居室しか暖房していないグループを部分暖房群(N=20)とし、それぞれの群で冬場の各居室の平均温度と日常身体活動量を測定・比較しました。調査結果は以下の通りです。

■結果のポイント 

 フロアー各居室間の温度差が少なく快適な温度帯にあるフロアー暖房群の方が、部分暖房群より、低強度の生活活動、中強度歩行活動の時間が長く、歩数も多いことが明らかになり、これらには有意差が認められました。(p<0.05)※11

・低強度生活活動※1の1日あたりの平均活動時間は、フロアー暖房群で236.5分、部分暖房群は215.0分。また中強度歩行活動※2の1日あたりの平均活動時間では、フロアー暖房群の35.6分に対し、部分暖房群23.8分。

・歩数でもフロアー暖房群の8082.1歩に対し、部分暖房群7493.8歩。

 高齢者がより長く、自立した生活を送るためには運動器系の機能を維持する必要があり、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」では65歳以上の身体活動の基準を策定しています。またWHO(World Health Organization/世界保健機構)は死亡に対する危険因子として、高血圧、喫煙、高血糖に次いで身体活動量の不足を第4位に位置付けるなど、健康寿命の延伸に対する「身体活動(生活活動+運動)」全体の位置付けが高まっています。

 高齢者の生活では、速歩やジョギングと言った中強度の身体活動だけでなく、家事活動、移動のような低強度の日常生活活動が健康維持に重要とされます。今回の調査結果では、部屋間の温度差の少ないグループで低強度の日常生活活動が多いことが確認されました。部屋間の温度差を少なくすることは、特別な運動をせずに日常生活を継続できることにつながり、健康維持の観点からも有効であることが考えられます。

■背景と目的

 高齢者が介護を必要とせず、健常で自立した生活を維持するには、身体活動を保持することが必要とされます。「健康づくりのための運動基準2006」※3において、身体活動の単位として「メッツ・時/週」※4という考え方が導入されるとともに、身体活動を運動と生活活動に分け、それぞれ3メッツ以上を中強度以上、3メッツ未満を低強度と定義しています。高齢者においては、中強度の身体活動だけでなく、家事活動、移動のような低強度の日常生活活動が、健康維持にとって重要だとされています。本研究では、高齢者の身体活動の実態と住宅の温熱環境との関連性に着目し検証を行いました。

■対象者

・セキスイハイムに居住する男性38名(フロアー暖房群N=18、部分暖房群N=20)
・平均年齢:フロアー暖房群70.1才±4.4歳、部分暖房群71.7才±4.8歳
・フロアー暖房群(築8年以内で、快適エアリー※5またはウォームファクトリー※6を採用し、かつ非居室を含むフロアー全体を暖房している)
・部分暖房群(築20~26年で、暖房器はエアコン、コタツ、ホットカーペットなどを利用し、かつリビングなどの主要な部屋しか暖房していない)

■結果 

1)フロアー暖房群(N=18)、部分暖房群(N=20)の2群間における冬場(今回の調査期間:1月~2月)の各居室の平均温度では、フロアー暖房群で室温が高く、日中の温度差も小さく、またリヒ゛ンク゛と非居室との温度差も小さいことを確認しました。

・フロアー暖房群は、部分暖房群に比べ室内平均温度が6~11℃も高く、リヒ゛ンク゛と非居室(トイレ、廊下)との温度差は3~4℃。(図1)また最高・最低温度差の平均はリヒ゛ンク゛、キッチンでは8~7℃、非居室(トイレ、洗面脱衣、廊下)で6℃前後です。(図2)

・一方、部分暖房群では、リヒ゛ンク゛と非居室との温度差は6℃となっています。(図1)
最高・最低温度差の平均はリヒ゛ンク゛、キッチンで12~14℃、非居室で9~10℃となっています。(図2)

 2)フロアー各居室間の温度差が少なく、均一かつ快適な温度帯にあるフロアー暖房群の方が、部分暖房群より、低強度の生活活動、中強度歩行活動の時間が長く、歩数が多いことが明らかになり、これらには有意差が認められました。(p<0.05)※11(図3、図4、図5)

・ 1日あたりの平均活動時間(生活活動、歩行)を見ると、フロアー暖房群では、低強度生活活動平均は236.5分、部分暖房群は215.0分。また中強度歩行活動では、フロアー暖房群の35.6分に対し、部分暖房群23.8分でした。ともにフロアー暖房群の方が、活動時間が長くなっています。

 ・歩数について見ると、1日当たりの平均歩数フロアー暖房群の8082.1歩に対し、部分
暖房群7493.8歩です。

 加齢に伴い移動能力は低下します。高齢者の生活では、中強度の身体活動だけでなく、家事活動、移動のような低強度の日常生活活動が健康維持に重要とされます。今回の調査結果では、部屋間の温度差の少ないグループで低強度の日常生活活動が多いことが確認されました。部屋間の温度差を少なくすることは、特別な運動をせずに日常生活を継続できることにつながり、健康維持の観点からも有効であることが考えられます。

■手法

1)測定方法

1.活動量:3軸の加速度センサー付活動量計(オムロン製)、12日間、24時間装着
2.温度測定:屋内5箇所、屋外1箇所にミニ湿温度データロガー(テストー製)を12日間設置

2)計測期間

・2013年1月~2月

3)検定方法

・年齢、身長、体重、肥満度指数(BMI; body mass index)、延床面積、Life-Space Assessment(LSA)※7、転倒自己効力感※8、老研式活動能力指標※9、歩行速度などについては、t検定、Mann-WhitneyU検定を用いて両群に有意差のないことを確認した。

4) 統計解析

・統計解析にはSPSS/Ver20.0 for Windowsを利用、統計学的処理はt検定、χ2検定、Mann-Whitney U検定、Fisher正確確率検定、相関回帰係数を用いた。危険率は5%未満を統計学的に有意差ありとした。

【注釈】

※1、2 身体活動・運動・生活活動について「健康づくりのための運動指針2006(エクササイズガイド゙2006)」より

※3 厚生労働省「健康づくりのための運動指針2006(エクササイズガイド2006)」    http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/undou01/pdf/data.pdf
※4 メッツ(Mets)、強さの単位、身体活動の強さを安静時の何倍に相当するかで表す単位
※5 快適エアリーとは熱交換型第一種換気システムと高性能フィルターおよび冷暖房
除湿ユニットを組み合わせた空調システム(セキスイハイムオリジナル)
※6 ウォームファクトリーとは、床下蓄熱暖房システム(セキスイハイムオリジナル)
※7 Life-Space Assessment(LSA)は、生活の広がりを評価する尺度、E-SAS
(Elderly Status Assessment Set)※10の指標の1つ
※8 転倒自己効力感、転ばない自信を評価する尺度、E-SAS※10(Elderly Status
Assessment Set)の指標の1つ
※9 老研式活動能力指標(TMIG Index of Competence)とは、Lawton の活動能力の体系に依拠して,ADL(activities of daily living/日常生活動作能力)の測定ではとらえられない高次の生活能力を評価するために開発された13 項目の多次元尺度
※10 E-SAS(Elderly Status Assessment Set)とは介護予防事業「運動器の機能向上」の効果を、筋力やバランスといった運動機能のみによって評価するのではなく、参加者(高齢者)が活動的な地域生活の営みを獲得できたか、という視点から評価することをねらったアセスメントセット。具体的には6つの指標を持つ。日本理学療法士協会が平成19年度に開発したアセスメントセット
※11 p値(probability-value/有意確率)とは、統計的仮説検定において,帰無仮説のもとで得られた検定統計量が実現する確率。「確率的に偶然とは考えにくく、意味があると考えられる」ことを指す。p値が0.01(p=0.01)というのは、この結果を偶然生じることが100回に1回あることを意味する。(p<0.05ある事柄が偶然起こる確率が5%以内という意味)を用いるのが一般的である。

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