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「親の介護に伴う住まい変化調査」について

2010年12月14日
株式会社住環境研究所

積水化学工業株式会社(プレジデント:高下貞二)の調査研究機関である株式会社住環境研究所(所長:倉片恒治、千代田区神田須田町1-1)は、このほど「親の介護に伴う住まい変化調査」を行いました。2010年8月に発表した「介護と同居に関するアンケート調査」の続編調査として行ったものです。
前回の「介護と同居に関するアンケート調査」では、(1)55~69歳の中高齢層は現在介護中を含め4割に介護経験があり、(2)親の介護に当たっては「親を呼び寄せ同居」が最も多く32%、次いで「親のところへ行って介護」24%、「新しく別の場所を探す」5%で、61%が同居を検討していました。
今回の調査※はさらに一歩踏み込んで、親の介護に伴ってどのように住まいを改善するのか、実施内容や実施率を調査、介護経験者と介護予定者の相違点を探りました。(※今回調査の対象者は、親の介護予定なしの方は含まれていません)

■調査結果の要約

1.介護予定者は近居介護を望む

介護スタイル(同居・近居・遠距離)は、「同居介護」が65%と最も多く、次いで「近居介護」23%、「遠距離介護」11%です。介護経験者とこれから介護を予定している人を分けてみると、介護経験者は72%が同居介護、近居・遠距離距など距離感を持った介護が28%。これから介護する人では42%が距離感を持った介護を望んでいます。自分たちが主体となって介護をする予定者で現在親と別居している人は、半数以上の55%が距離感を持った介護を希望しています。

2.介護同居は、同居するのに十分な住まいがあるかどうかが決め手

介護同居タイプは、「もともと同居していた」56%、「親を呼び寄せ同居し介護」26%、「自分たちが親のところへ行く」15%。親を呼寄せる、自分たちが親のところへいく理由は、同居するのに十分な住まいがあるかどうかが大きな理由となっています。

3.介護をきっかけに4割が住まい変化

介護に伴って住まい変化を実施したのは約4割。内訳は「リフォームをした」73%、「建替えた」11%、「住み替えて新しく戸建を購入した」12%、「住み替えて新しくマンションを購入した」4%。

4.低い築11年超のバリアフリー化率

介護予定者の住まいで既にバリアフリー化されているのは築10年以内までが高く、浴室のバリアフリー化(高齢者に配慮した浴室)は築10年以内が63%に対し11~20年は18%。築10年以内と築11年超でバリアフリー化率が大きく異なっています。

■調査概要

調査目的: 親の介護に伴う住まい変化の把握
調査対象: 親の介護予定がある方(全国の55~64歳の男女、持ち家居住者616人)
現在、親を介護中、過去に親の介護経験のある方(全国の55~69歳の男女、持ち家 居住者838人)
調査方法: インターネット調査
調査時期: 2010年8月

■回答者の属性

年齢構成: 介護予定者 55~59歳50%、60~64歳50%
介護経験者 55~59歳33%、60~64歳37%、65~69歳30%
家族構成: 本人のみ5%、夫婦31%、夫婦+子30%、夫婦+親14%
夫婦+親+子13%、夫婦+子+孫2%、その他4%
築年数: ~5年6%、6~10年9%、11~15年13%、16~20年13%、21~25年16%、
26~30年15%、31~35年11%、36~40年7%、41年以上10%
年収: ~200万円未満7%、200万~400万円未満22%、400万~600万円未満24%、
600万~800万円未満17%、800万~1,000万円未満13%、
1,000万~1,500万未満円12%、1,500万円以上5%

※グラフ中の数字は全て%を表す

■調査結果の概要

1.介護予定者は近居介護を望む

(1)介護スタイル

介護スタイルは、「同居介護」が65%、「近居介護」23%、「遠距離介護」11%で、「同居介護」が3分の2を占めています。介護経験者は「同居介護」が72%ですが、介護予定者は56%と16ポイントの差があります。「同居せずに近居して介護」は介護経験者19%に対し介護予定者28%、「遠距離介護」は介護経験者9%に対し介護予定者は14%。

■介護スタイル(介護経験者・介護予定者)

(2)介護予定者の介護スタイル

介護予定者で自分達が主体となって介護を行う方のみを抽出し、親との同居別介護スタイルを見ると、現在親と同居中の方は、そのまま同居し介護を行う方がほとんどです。一方、別居している方は「親と同居し介護をする」が45%ですが、「近居介護をする」は41%、「遠距離で介護」は14%と、55%の人が距離感を持った介護を望んでいるのが見てとれます。

■親同居別 (自分が主体で介護を行う方のみ)

2.介護同居は、同居するのに十分な住まいがあるかどうかが決め手

(1)介護同居タイプ

介護同居のタイプは、「もともと同居していた」56%、「親を呼び寄せ同居し介護」26%、「自分たちが親のところへ行く」15%、「別の場所を探して同居」2%。介護経験者と介護予定者で同居スタイルに差異が見られ、「親のところへ行って同居し介護」は介護予定者で21%、介護経験者を9ポイント上回っています。

(2)同居する場合の理由

親を呼寄せる理由として「自分、配偶者に仕事があり離れられない」48%、「自分達の方に同居するのに十分な住まいがある」47%。自分達が親のところへ行く理由としては「親の方に同居するのに十分な住まいがある」42%、「自分、配偶者の生まれ故郷だから」36%。介護を機に同居する場合、同居するのに十分な住まいがあることが大きな理由となっています。

■親を呼寄せる理由

■自分達が親のところへいく理由

3.介護をきっかけに4割が住まい変化

(1)介護経験者の住まい変化

介護経験者の住まい変化をみると「住まいを変えた」39%、「何もしていない」が61%と住まい変化については、消極的といえます。(※住まい変化:リフォーム、建替、住替えて戸建・マンションを購入すること)

(2)住まい変化の内容

住まい変化の内訳をみると「リフォームをした」73%、「建替えた」11%、「住替えて新しく戸建住宅を購入した」12%、「住替えて新しくマンションを購入した」4%と7割以上がリフォームで対応しています。(※住まいを変えた方39%=235人を母数としています)

(3)住まい変化のきっかけ

介護に伴う住まい変化のきっかけは、「親が高齢で生活していくのが大変になった」62%、「病気やケガで入院し退院後の生活に備えて」37%、「親が片親になり一人暮らしが心配」19%がベスト3。

住まい変化をリフォーム・建替・住替えの検討別に見ると、「親が高齢で生活していくのが大変になった」がいずれもトップとなっています。他の検討者に比べてポイントが高くなっているのは、リフォーム検討者で「病気やケガで入院後の生活に備えて」43%、建替検討者では「親が片親になり一人暮らしが心配」35%。つまり、建替や住替えでは高齢の親の生活を支えることが、リフォームでは突発的なことが住まい変化のきっかけとなっています。

4.低い11年超の住まいのバリアフリー化率

介護予定者の住まいを築年数別に見ると、介護予定者で既にバリアフリーになっている割合は、築10年以内が高くなっています。浴室内の手すり設置率は築10年以内71%、11~20年41%、21~30年39%、31年以上36%。
築11年を超えるとバリアフリー化率が低くなっています。今後、親と介護する予定で住宅を整備しなければならない方は、築11年以上の人といえます。

■築年数(介護予定者)

■参考資料

築11年以上のバリアフリー化が急務!

今回の調査は2010年8月に発表した「介護と同居に関するアンケート調査」の続編調査として行ったものです。親の介護に伴ってどのように住まいを改善するのか、介護経験者と介護予定者の実施内容や実施率を探りました。

その結果明らかになったことは、介護予定者の住宅を築年数別にみると、築10年以内と築11年超のバリアフリー化率に大きな差があることです。では、築10年を境になぜ、このように格差が生じているのでしょうか?建築制度の変遷からみると、1994年にハートビル法が制定され公共建築物へのバリアフリー化が義務付けられ、95年に建設省から「長寿社会対応住宅設計指針」がまとめられます。翌年96年に住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)が「バリアフリータイプ基準」を設定、2000年「住宅の品質確保促進に関する法律(品確法)」のなかで高齢者等に配慮する対策が示されました。住宅改修関連では、同年から始まった介護保険制度の住宅改修サービスとして住宅改修費支給が行われるなど、この10年の間にバリアフリーに対応する制度が整備されてきたといえます。しかし新築住宅のバリアフリー化は進んだものの、既存住宅のバリアフリー化は十分とは言えないことが今回の調査で浮き彫りにされています。一方で、脳卒中などを予防し、家の中の活動を妨げないために重要な温熱環境への配慮は、築10年以内でも実施率は低いことも明らかになりました。施設介護から在宅介護へ国の施策が転換する中、築11年超の住宅のバリアフリー化を急ぐ必要があるといえます。

あと20年ほどで、中高齢者は、実は自分が介護される側になる可能性が高くなります。自由回答からも「親の介護が終わり、今後は自分達の番でどうなるのか?」と自分自身が在宅介護される時の不安も見受けられます。健康維持・介護予防の住まいは、自分達の健康も維持し、当然その先の介護にも対応することが可能です。その為、少なくとも住まいのバリアフリー化は、親のためだけでなく、自分自身の老後のためにも、今から準備しておく必要があるのではないでしょうか。

また今後注目したいのは、介護経験者の同居介護が72%に対し、介護予定の方の同居予定は56%と低く、距離感を持った介護の意向が高くなっていることです。実際に介護を始めるときにどのように変化するかは不明ですが、同居介護が主流だったものが距離感を持った介護に移行している予兆とも受け取れます。更に研究を深め変化の方向を探索していきたいと考えております。
住環境研究所
所長 倉片恒治

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