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河田教授の減災コラム

第4話

首都直下地震(都心南部直下地震)に備えて、
国難を防ぐために。

グニチュード7.3クラスの首都直下地震が向こう30年以内に発生する確率は70%。これは2003 年9 月26 日に起きた十勝沖地震の発生確率が60 %だったことを思えば、70 %はいつ起きてもおかしくない確率です。その際、震度6 弱以上が想定される地域には現在約3000 万人もの方々が住んでいて、ウィークデーのビジネスアワーでは、東京23 区に周囲からさらに約280 万人もの人が入ってくるので、約3300 万人にものぼります。この過密都市における被災は、スーパー都市災害として首都機能を消失しかねません。

首都直下地震の被害総額は95兆円にのぼると試算されていますが、実のところ過密都市が引き起こす様々な被害についてはカウントされておらず、その有効な減災対策が不明なままで、被害総額は天文学的数字になるかもしれないのです。


ではどのような被害が考えられるのでしょうか。大地震の被害死者数は人口(およそ震度6弱以上)の0.1%が想定されるので、首都直下型地震では3.3万人を超える人が犠牲になってしまう可能性があります。過去のトルコ大地震、台湾大地震、四川大震災、阪神大震災などでの犠牲者はやはり被災地人口の0.1%近くだったというデータが示しています。

また、被災者の救援部隊として、自衛隊も消防も警察も絶対数が不足してしまいます。東日本大震災では、陸上自衛隊が最大106,300人が出動しましたが、これ以上の実働部隊はいません。もし首都直下地震が起こったら、この数ではまったく足りないのです。これは警察も消防も同じです。東京の消防庁はハイパーレスキュー隊を昔、品川に集結していました。今は分散配置するということで、首都圏の4か所から6か所に分散配置する動きをしていますが、そういう形で編隊してもなかなか絶対値が足りません。特に首都圏には超高層ビルが1600棟もあり、15階以上に住んでいる家族は9万6000世帯もいてエレベーターの閉じ込めや火災発生(過去のデータによれば、震度5強以上では、およそ市街地の1万世帯当たり1か所出火した)などの際には誰が助けにいけるのでしょうか。まったく手が足りない状況です。病院にいる26万人もの入院患者の治療をどのように継続できるのかということも考えなければいけません。

しかも広域長時間停電によって通信機能が麻痺し、情報が途絶えてしまいます。インターネット社会で通信機能が途絶えるということは都市機能が停止するということです。当然救援連絡は不通になることを覚悟しなければいけません。

さらにすぐさま水・食料・燃料が不足して生活不可能の状態に陥ります。地震後2週間で最大720 万人の避難民が発生して、その食料と水をどうするのか。720 万人に一人1 個おにぎりを配ろうとしても、720 万個のおにぎりが要ります。誰がつくりどう配るのかと考えただけで、それが不可能なことだと分かります。飲料水についても、わが国の流通では、ペットボトルの水が国内に11 日間分しかありません。わが国は量よりも質の時代になっており、ストックをするとコストもかさむため、あらゆるところでストックが少なくなっています。薬も食料も同じです。あらゆるところでモノ不足が起こります。

これまで阪神・淡路大震災を経験して、3 日我慢すれば4 日目からは救援物資が届くので3 日分は自助努力で何とかしてくださいと言ってきましたが、首都直下地震の場合はそうはいきません。そのため、最低でも1 週間分、さらには2 週間という単位で、備蓄してくださいとお願いしているわけです。

また、日本の中枢である東京が停止するということは、直接的な被害だけでなく計り知れない事態を引き起こす可能性があります。金融・株式市場など、世界的なパニックにも発展しかねません。国防上の問題もあるでしょう。このように首都直下地震は、超過密都市の様々な問題を引きおこし、国力を削いでしまうまさに国難です。少しでも被害を少なくするように準備しておかなければいけません。

「減災」というのは、1988年に私が作った言葉です。被害をゼロにできる見込みが明らかにない場合は、被害の最小化を目指す、ひとりでも犠牲者を少なくする。だから「防災」ではなく「減災」であるというわけです。基本は事前のハード対策ですが、すべてはハードで守れるわけではありません。ソフトと組み合わせて少しでも被害を抑える努力を怠らないことが大切です。

まずは壊れない耐震性能に優れた建物や住宅などを地域全体で取り組むこと。火災が発生しにくくなり、地域全体の被害を小さくすることができるからです。自らの地域が被災しなければ、他の地域の救助、救援に駆けつけることができて、人の力でさらに被害を小さくすることができます。

高齢者の避難誘導、応急処置や介護技術など、高齢者介護施設で働く方々のノウハウは非常時に地域の被害を小さくする貴重な役割として期待されています。首都圏直下地震に備えて「減災」の取り組みを一層進めて、被害が少しでも小さくなるように力を合わせましょう。私たち一人一人の自覚が国難を食い止める何よりの力なのです。


河田恵昭氏 Profile
関西大学社会安全学部・社会安全研究センター長・特別任命教授 工学博士 京都大学名誉教授。専門は防災、減災、縮災。阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター長(兼務)のほか京大防災研究所長を歴任。21世紀COE拠点形成プログラム「災害学理の解明と防災学の構築」拠点リーダー。大都市大震災軽減化プログラム(文部科学省)研究代表者。2009年 防災功労者内閣総理大臣表彰、2017年アカデミア賞受賞。現在、中央防災会議専門委員、防災対策実行会議委員。日本自然災害学会および日本災害情報学会会長を歴任。(2017年4月現在)

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