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「東日本大震災による住意識の変化」追跡調査について

2012年3月1日
株式会社住環境研究所

積水化学工業株式会社住宅カンパニー(プレジデント:高下貞二)の調査研究機関である株式会社住環境研究所(所長:倉片恒治、千代田区神田須田町1-1)は、「東日本大震災による住意識の変化」調査(2011年7月)において明らかにした、震災による住意識や住宅重視ポイントなどが、半年を経過してどのように推移しているのか、どう変わっているのかを探るため、このほど「追跡調査」を実施しました。今回も前回同様、消費行動の研究を行っている慶応義塾大学商学部清水研究会(清水聰教授)との共同調査です。

■調査結果のポイント

1.親族の呼び寄せ意向、さらに強まる

東日本大震災後、親や子どもと一緒に住む、近くに呼び寄せたいという意向が強まりましたが半年経過した今、その傾向がさらに強まっています。「呼び寄せ意向」は震災前27%→震災後(昨年7月)32%→半年後の今回調査では39%となっており、親族の呼び寄せ意向はさらに強まっています。

2.地域社会への参加意向も強まる傾向

東日本大震災後のトレンドの1つに地域社会への参加意向の高まりがありますが、今回調査でも昨年7月調査36%(震災前28%)から1ポイント増の37%と増加傾向を維持。「今のままでよい」は震災前49%→震災後42%→今回35%に減少しており、問題意識を持った人が増えていると見ることができます。

3.立地重視派は減少、建物重視トレンドは継続

東日本大震災後、災害に強い立地を重視する傾向が高まりましたが(震災前20%→震災後45%)、今回の調査では24%に減少。一方、「多少費用がかかっても基準以上の安全対策を実施したい」は震災後より増加の61%(震災前は43%)。建物構造については、安心安全を重視する傾向は継続しています。

4.住宅検討者は安全性、省エネ重視が鮮明に

震災前と比べて今回の調査では、住まい選びの19項目における重視ポイントは、平均で78%から81%と3ポイント増加し、住まい選びに関してより様々なことを重視する傾向が高まりました。特に重視度が上昇しているのは「地震・台風時の安全性」(5ポイント上昇)「冷暖房の省エネ対応」(7ポイント上昇)「高齢者配慮」(6ポイント上昇)など。

■調査の概要

調査目的:東日本大震災で変化した住意識や住まいの選び方の「その後の変化」の把握
調査対象:2011年7月調査の回答者
一般(既婚者)と住宅検討者(過去5年以内に住宅展示場を訪れた未購入者)
調査エリア:全国
調査方法:ウェブ調査
調査時期:1 月13~16 日
有効回答:一般652件(前回:1,088件)
住宅検討者648件(前回:981 件)
推進体制:慶応義塾大学商学部清水研究会(清水聰教授ならびに大竹宏貴氏 他)と共同調査

(注意)本調査では、昨年7月と本調査の両方に回答頂いた方のみのデータを示しています。回答数の違いなどにより一部、昨年7月の調査結果と数値が異なる場合があります。

■調査結果の概要

1.親族の呼び寄せ意向、さらに強まる(一般)

震災後に変わった住まいに対する価値観、重視ポイントが、半年を経過してどのように変化したのかを探りました。親族の呼び寄せ意向(「遠距離にいる親族(両親や子供など)を呼び寄せる、近くに引っ越すなど、できるだけ近くに住もうと考えるようになった」+「その意見に近い」)は、震災後の32%(震災前27%)からさらに39%に強まりました。

各世代とも、親族呼び寄せ意向は増加傾向ですが、昨年7月と同様に若い世代の人の意識が高いことが伺えます。

2.地域社会への参加意向も強まる傾向(一般)

「地域社会との関係(参加意向)」も、昨年7月調査36%(震災前28%)から1ポイント増の37%と増加傾向を維持。注目すべきは「今のままでよい」は震災前の49%→昨年7月調査42%→今回調査35%と減少しており、問題意識を持つ人が増加していることです。

世代別に見ると震災後に比べ地域社会への参加意向(Aの意見に近い)が強くなったのは60代以上。8ポイント増となっています。

また、震災前と比較して、震災後に実施したもの(こと)、増えたもの(こと)では、どの世代でも家族と過ごす時間、連絡、会う機会などが上位にあり、家族の絆を大切にしようとしていることが伺えます。

3.立地重視派は減少、建物重視トレンドは継続(一般)

昨年7月調査では、住まい選びに際して災害のことを考えて立地を重視する人が増加しました(震災前20%→震災後45%)が、今回の調査では24%に減少しました。

しかし、建物構造については、「費用がかかっても基準以上の安全対策を施した住宅にしたい」が震災前43%→震災後59%に上昇、今回調査でも61%とさらに増加。建物構造については、安全安心を重視する傾向が続いています。

また、震災後、災害への備えとして新たに実施していることでは、特に実施していない人が30~40%程度います。実施している項目では「水の備蓄」に加え、「電池の備蓄」「携帯電話の充電用グッズを常備」「お風呂の残り湯を張る」などを実施。インフラが被害を受けた場合の備えるようになったのが注目されます。

4.住宅検討者は安全性、省エネ重視が鮮明(住宅検討者)

住宅検討者の住まい選びの重視ポイントは、震災前は「住宅の間取り、プラン」「設備」「収納スペース」「住宅の広さ、部屋数」など見てわかりやすいものが上位を占めていましたが、震災直後は、当然のことながら「地震・台風時の住宅の安全性」(震災前8位)がトップに。「住宅の断熱性や気密性」などの「性能」の項目が上位になりました。しかし、今回調査では「住宅の間取り、プラン」が1位に復活するなど見てわかりやすいものが上位に。「地震・台風時の住宅の安全性」は3位に後退しました。

震災前と比べて今回の調査では、住まい選びの19項目における重視ポイントは、平均で78%から81%と3ポイント増加し、住まい選びに関してより様々なことを重視する傾向が伺えました。
その中でも、震災前からの重視ポイントの変化量が19項目の変化量の平均である3ポイント以上に重視ポイントが上昇しているのは「冷暖房の費用負担などの省エネルギー対応」(震災前75%→震災後81%→今回調査82%)、「地震、台風時の住宅の安全性」(同81%→88%→86%)、「高齢者への配慮」(同66%→74%→72%)などの項目で、住宅の「性能」に関して重視する傾向は依然として続いていることがわかりました。

住意識変化の考察、東日本大震災で本当に変わったこと

マグニチュード9.0という巨大地震は、津波被害、液状化被害、さらに原発事故も併発し、国のエネルギー政策の見直しをも迫っています。東日本大震災を契機に暮らし方、さらには住意識にも大きな影響を与えました。東日本大震災から1年、様々な状況の変化において震災で変わった住意識や住宅選びの重視ポイントがどうなっているのか、震災で本当に変わったのは何なのかを探ったのが「東日本大震災による住意識変化」追跡調査です。

昨年7月調査で明らかになったのは第1に家族意識の変化でした。震災を契機に家族とか地域との「つながり」の大切さが見直され、さらに「地域との絆」も強めようという気運が高まりました。家族、人と人、地域との関係に新しい風が吹き始めたと感じました。第2は住まい選びの重視ポイントの変化です。震災後、「地震・台風時の住宅の安全性」「エネルギー対応」など性能や機能を重視する傾向が強まりました。

 追跡調査(今年1月実施)は、大震災から10ヵ月、前回調査から半年後の意識変化を探ったものです。前回調査で注目した「親族の呼び寄せ意向」(家族の絆)はさらに強まっています。震災前27%→震災直後32%→今回39%に上昇しています。もう1つの絆、「地域との絆」については震災前28%→震災直後36%→今回37%と1ポイント増ですが、地域社会への参加意向は「今のままでよい」とするのは震災前49%→震災直後42%→今回35%に減少しています。これらは「親族の呼び寄せ意向」(家族の絆)も同じように、第一義的ではなくとも、何かしら配慮すべきではないかという問題意識として「絆重視の機運」は今後さらに高まるのではないかと見ています。

 震災直後、住まい選びに関して重視ポイントが大きく変化したものの1つは「立地」でした。しかし、今回の調査では、「多少通勤や通学に時間がかかっても万が一の災害に強い立地重視」は、(震災前20%→震災直後45%)今回24%に低下しました。一方、建物構造については、「多少費用がかかっても基準以上の安全対策を施した住宅にしたい」は、(震災前43%→震災直後59%)今回61%へ上昇しています。住まい選びは立地と建物構造のどちらも重要ですが、大震災から1年近く経過すると、震災を契機に新たに考えるようになった帰宅困難の観点などからも、日常生活の利便性が見直される傾向にあるものと思われます。
全体を整理してみますと、震災前は住まい選びにおいてデザインや間取りが重視されていましたが、震災直後は住宅の安全性が最重要視されました。しかし、震災から1年を経過した今回の調査では、住宅の安全性は順位的には3位に後退するものの、住宅の安全性や省エネルギー対応など性能に関するものは引き続き重要視されています。震災を契機として性能重視や絆重視のトレンドは今後も続いていくものと見ています。

住環境研究所
所長 倉片恒治

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